のび太の恐竜 2006
- Post by
- tomo
- Time
- 2007-04-14 13:12:56+09:00
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- Title
- 映画ドラえもん のび太の恐竜 2006
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- ポニーキャニオン
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旧作品の方は未見でTV放映についても声優変更前についてもかなり前から変更後についてもたまたま1回しか観ていないが、賛否両論の新・声優陣についてはかなり良い印象。 個人的にドラえもんはオッサン声の方が合っていると思うのでテレビ朝日系の旧作も含め違和感は拭えないが、キャラクター的に保護者目線よりも小学生と同等目線になっているのも、寧ろ原作に近いように思う。 のび太も比較的ヤンチャな感じになっていてただのズボラな弱虫では終わらない魅力が感じられるし、ジャイアンの「成長が早目の小学校高学年」っぷりは、流石10代が演じているだけあってガチ。 それにしても、現ジャイアンと声の高さが殆ど同じ旧ジャイアンママ役青木 和代の、あのソウルフルなシスター声質は何なのか。 関係ないが。
しかし、新レギュラー声優陣の頑張りがありながら、ピー助の声に無理があり過ぎて興ざめ。 裏声で演じられる小さい頃を除き、ピー助は全編「ぴー」「ぴゅーい」と明瞭に言語的な発音でしかも棒読みなのだから。 演じたのはドラマ等で子役タレントとして人気者だそうなので、ジブリ作品等で横行して定着したタレント配役の一環なのだろうが、子役タレントのせいというより10mもの巨体を変声期以前が演じること自体に無理がある。
そもそも、のび太達と精神的交流を果たすとは云え恐竜役を人間が演じる必要もないんじゃないかと。 ピー助以外の恐竜は効果音の様な鳴き声だが、その手法でも喜怒哀楽は表現できているようだから同じ手法でピー助も作れば良いのだ。 中盤の、湖でのアラモサウルスとティラノサウルスのバトルシーン直前に出てくるアラモサウルスの赤ん坊の声なぞ、非常によい手本。
絵柄についてはテレビ朝日版旧作と比較して概ね原作に近いニュアンスのシーンが多く、ドラえもんのボディの影の付け方が原作者によるイラストに極めて近いカットもあり、その種のシーンに違和感はない。 また、タケコプターで飛行するシーンでの髪の毛の揺れや巧みなパース描写など、これまでなかった表現でも良い箇所も多数ある。 他方で著名アニメータがその画風を存分に活かした独特のシーンが随所に散りばめられており、絵柄や動き方の不統一が目立つのは気になる。 特に、宮澤 康紀が手がけたという2度目の白亜紀到着前後でのドラえもんの表情や体型のゆるい動きは作品世界を大きく逸脱しているし、森 久司によるアラモサウルスとティラノザウルスの戦いのシーンではタメや瞬発力のコントロールなど、原画は素晴らしいのでしょうが動画の仕上げ方が雑だったりキャラクターのアングル変化に背景が全く追従していなかったりと、前後のシーンと仕上がりの差が激しすぎて映画としての統一感に甚だしく欠ける。 突如としてコレジャナイ感の強いシーンになるので観ていて激しい違和感に苛まれる。
ストーリー自体は原作長編版および旧映画版と骨子は同じ様子で、化石から復元され孵化したフタバスズキリュウを白亜紀の正しい場所に返す過程での、密漁者との対決と冒険を描くもの。 時間旅行ものとしては、どのタイミングからでも過去に行けるという世界観なのにどうして故障したタイムマシンで「急いで」ピー助の処に向わなければならないのかとか、物語の根幹に係るSF的な詰めの甘さもあるが、もともと一話完結型のドラえもんでは有り勝ちなこと。 (原作の漫画では助かった後の本人がタイムマシンで助けに行くというケースもあり、本作品でも同様の方法で容易に助かる筈だったり。) そこは問わないにしても、作品テーマ絡みでの不統一は問題。 自然環境破壊に対する警告が主テーマとなっている本作品では、密漁者達の傍若無人ぶりが例えば白亜紀での廃液の垂れ流しや廃棄物の放置として描かれている一方で、同じことをドラえもんがあちらこちらでやらかしている点。 必要な道具が見つからずにポケットの中身をばら撒きまくるシーンが何度も出てくるが、ギャグなら環境破壊を黙認という訳にはいかないのでは? しずかが花を摘んでいるシーンだって環境破壊だが、あまり批判的に描写されてはいないことに驚く。 「企業体による」或いは「営利目的での」破壊のみを攻撃し、他を不問とする環境破壊批判の傾向は有り勝ちな気もするが、家族向け映画だからこそそこはキチンと表現して欲しかった。