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Additive Synthesis (加算合成)

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tomo
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2000-06-25 19:34:24+09:00
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正弦波を加算することで目的の波形を得ようとする合成方式。 狭義には倍音列上の正弦波のみを合成する方式。 数学的に、あらゆる周期関数はその周期を分割した周期を持つ円関数群—倍音列—の和で表現できるので、これを応用して様々な波形を作り出すことが可能。 この原理自体は古くから知られるが、シンセサイザーとして実用になったのはデジタル信号処理技術が進んで多数の正弦波をリアルタイム制御できるようになってから。

原理的な問題は、倍音列で表現できるのはあくまで周期的な波形であって、決してあらゆる音声波形ではないこと。 実用レベルでは、打弦の瞬間等の過渡的な応答部分の合成が不得手。

実施例

Pure Additive

Sampled波形と組み合わせない純然たる正弦波加算方式。 基本的な合成方式なので、様々な実施例がある。

Kurzweil K150FS

Fourier Synthesizer音源。 240の独立したオシレータを持ち、ピッチすらも独立である為、倍音列に捕らわれずに正弦波加算合成が行えた。 当然、1音当りに何オシレータ使うかでヴォイス数が変化する。

河合楽器 K5

1987年に発売の機種。 音源方式名は当初はARTS音源と呼ばれたが、後にADD音源に改名となった。

最大127倍音までの倍音列独立レベル調整と1 DCO当り4グループの振幅エンベロープを搭載した純然たる倍音加算方式シンセサイザー。 リアルな樂器シミュレーションは当然の如く不可能だったが個性的な音色や大画面とジョグダイヤルでのわかり易いエディット方式、プロシューマー価格帯のデジタルシンセサイザーではおそらく初のバリアブル・マルチティンバーが密かにマニア受けした。

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倍音構成をスライダーで変更し、各々独立でLFO振幅変調のON/OFFが設定できる倍音加算方式音源。 エンベロープでの音色変化は擬似LPF式に一括して上から倍音レベルを下げるだけなので、倍音加算方式ならではの多彩な音色変化は得られない。

Camel Audio Cameleon 5000

Additive Morphing Resynthesiserと命名されたVSTi。 後述のCUBEと同様の構成だが正弦波数は少ない。 その一方で各倍音毎に独立のデチューン機能があり、PCM波形からの再構築時の解析能力も高い。

VirSyn CUBE

最大512基の正弦波を独立エンベロープ等で制御する正当な倍音加算方式だが、各正弦波のピッチインターバルを変更することで倍音外の部分音も合成できFM様の変調感が伴わないクリアな金属音などが特徴。 また、第1.5版からはPCM波形ファイルを取り込んで正弦波群で再構築する所謂re-synthesis機能も搭載した。

Addvanced Additive

正弦波加算方式—ことに倍音加算方式—にsampled波形を組み合わせることで、過渡音や非倍音的なノイズ成分を合成し易くしたシステム。

SA

RolandのSA(Structured Adaptive Synthesis)方式は楽器の音を要素分解/抽出して演奏者の表現に合わせて最適な汲み合わせで再合成するという概念だが、実際の中身は正弦波加算方式に音の立ち上がり等複雑な部分のみsampled波形を併用するというもの。 搭載可能なROM容量も演算能力も現在とは比べものにならない程乏しかった時代に良質なピアノ音色を実現する為の苦心の結果と思われる。 同時期のピアノ音源ヤマハ TX-1Pがマルチサンプルの区切れ目毎に甚だしくずれた調律で強弱方向は16段階程度しかない大雑把な階段状の音色変化だったことを考えれば、この方式の独自性が判るだろう。

後年、この音源の音色調整パラメータを増やしたAdjustable SA、搭載波形容量を増やしPCM音源に近付いたAdvanced SA方式も開発され、各々Rhodes MK-80FP-8等に搭載された。

品名 発売年 標準単価 [ ¥ ] 仕様 備考
発音数 鍵盤 幅 [ mm ] 奥行 [ mm ] 高さ [ mm ] 重量 [ kg ]
RD-1000 1986 550000 16 木製88 1352 557 154 43.5 ミッキー 吉野氏御用達だった事でもお馴染み。
MKS-20 1986 250000 16 480 90 400 8 RD-1000の音源モジュール版。
RD-300 1986 235000 16 塑膠製88 1405 461 133 27.2 RD-1000の鍵盤が合成樹脂製に、音源もEQが3bandから2bandに簡略化された機種。
RD-300S 1991 218000 16 塑膠製88鍵 1405 461 133 33 RD-300の鍵盤部をRotary Oil Damper方式に改善した機種。
P-330 1988 158000 16 482 340 44 8 RD-300 / Sの音源モジュール版。
MK-80 1991 350000 16 塑膠製88鍵 1370 546 152 34.5 頭文字R集めの一環か、Rhodesの商標を買い取ったRolandによるRhodes Electric Pianoの続編気取りの機種。 Rotary Oil Damper方式の鍵盤部も含め本家には全く似ていないが、独自の樂器と割りきればイケイケな逸品。
FP-8 1991 200000 28 塑膠製88鍵 1343 383 120 26 3色から選択可能とか、電子樂器らしからぬ仕様の機種。

同時期のHP系列も同じ音源。

参照

Technical Information and History on the Roland HP-Series Pianos
Roland製ピアノの技術史。 SA音源にも詳しい。

河合楽器 K5000

(株)河合楽器製作所が1996?1997年にかけて発売した機種。

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